アクアフィリングが5年後も消えないのはなぜ?体に残るリスクと除去の必要性

アクアフィリングは5年経過しても体内に残り続け、さまざまなトラブルを引き起こすリスクがある注入物です。手軽な豊胸手術としてかつて普及したアクアフィリングですが、本来は数年で吸収されてなくなるという触れ込みとは裏腹に、実際には長期間残留するケースが全国で相次いで報告されています。注入から時間が経過するほど、組織への癒着や移動といった合併症のリスクが高まるため、現在の状態を正しく把握することが重要です。アクアフィリング 5年後で悩む方は一度ご相談ください。

目次

アクアフィリングが5年経っても体内に残り続ける理由

98パーセントが水分という説明の落とし穴

アクアフィリングが日本に導入された当初、多くのクリニックでは成分の98パーセントが水分であり、残りの2パーセントも安全な化合物であるため、3年から5年かけてゆっくりと体内に吸収されると説明されていました。しかし、この説明には大きな誤解が含まれています。成分のほとんどが水であったとしても、それを保持している2パーセントの物質が問題なのです。この2パーセントはポリアミドと呼ばれる合成樹脂の一種であり、化学的に非常に安定しているため、人間の体内で分解・吸収される酵素を持っていません。そのため、水分を抱え込んだままゼリー状の形態を維持し続け、5年、10年と体内に残り続けることになります。

ポリアミド成分は体内で分解されない

アクアフィリングの主成分であるコポリアミドは、プラスチックに近い性質を持つ人工物です。ヒアルロン酸のように、体内に存在するヒアルロニダーゼという酵素によって分解される物質とは根本的に異なります。体にとってアクアフィリングは異物であるため、マクロファージなどの免疫細胞が排除しようと試みますが、分子構造が複雑で大きすぎるため、分解することができません。結果として、吸収されるどころか、周囲の組織と複雑に絡み合いながら、半永久的に留まってしまうのです。これが、術後5年が経過してもバストのボリュームが減らない、あるいは形が変わって残っている最大の理由です。

ヒアルロン酸との決定的な違い

豊胸で使用されるヒアルロン酸は、時間の経過とともに確実に体内の酵素で分解され、水と二酸化炭素になって排出されます。そのため、効果は期間限定ですが、安全性は高いと言えます。一方、アクアフィリングには分解を促進する薬剤が存在しません。ヒアルロン酸であれば溶解注射でリセットが可能ですが、アクアフィリングは一度注入してしまうと、自然消滅を待つことは不可能であり、物理的に取り出す以外に体から消し去る方法がないのです。この非分解性こそが、数年後のトラブルを招く要因となっています。

アクアフィリングは吸収される素材ではなく、実は非吸収性の異物です。5年経っても変化がない場合は、組織への悪影響が出る前に専門的な検査を受けることを強くおすすめします。

5年後に現れやすいアクアフィリングの合併症とリスク

組織への浸潤と広範囲への移動

アクアフィリングの最も厄介な特徴の一つに、移動性が挙げられます。注入直後は大胸筋の上や乳腺の下に留まっていますが、5年という長い歳月の中で、重力や周囲の筋肉の動きによって、本来の場所から別の部位へと流れていくことがあります。これはアクアフィリングが組織の隙間に入り込みやすい性質を持っているためです。脇の下や背中、さらには腹部の方まで充填剤が移動してしまうケースも少なくありません。移動した先で炎症を起こすと、激しい痛みや皮膚の変色を伴うことがあり、除去手術も広範囲に及ぶため非常に困難になります。

遅発性感染症による痛みとしこり

注入から数年が経過した後に突如として発症する遅発性感染症も、5年後のアクアフィリングで見られる代表的なトラブルです。注入直後は問題なくても、体調不良や免疫力の低下をきっかけに、体内のアクアフィリングに細菌が繁殖し、化膿してしまうことがあります。一度感染が起こると、胸全体が赤く腫れ上がり、脈打つような強い痛みが生じます。また、細菌がバイオフィルムと呼ばれる膜を形成してアクアフィリングを包み込むため、抗生剤の点滴だけでは完治せず、膿と一緒に注入物をすべて掻き出さなければならない深刻な事態に陥ります。

炎症が慢性化するメカニズム

感染まで至らなくても、異物に対する拒絶反応として慢性的な炎症が続くことがあります。体はアクアフィリングを排除できないため、それを膜で覆って隔離しようとします(カプセル形成)。この膜が厚くなりすぎたり、中のアクアフィリングが変質したりすることで、胸が硬くなるしこりが形成されます。慢性炎症が続くと、周囲の健康な組織までダメージを受け、乳腺組織が萎縮したり、皮膚が薄くなったりする二次被害が発生します。5年経過して、胸に違和感や部分的な硬さを感じる場合は、内部で慢性炎症が起きているサインかもしれません。

時間の経過とともにアクアフィリングが移動したり変質したりするリスクは高まります。痛みや赤みがなくても、内部で炎症が静かに進行しているケースがあるため注意が必要です。

残留したアクアフィリングを放置する危険性

乳がん検診への悪影響と誤診のリスク

5年後も胸に残っているアクアフィリングは、乳がん検診の大きな妨げになります。マンモグラフィ検査では、アクアフィリングが白く写り込んでしまい、その下にある小さな腫瘍を見逃してしまう危険性があります。また、エコー検査(超音波検査)でも、アクアフィリングによる影や、それが引き起こしたしこりが乳がんと区別しにくく、精密検査が必要になるなど、受診者にとって大きな精神的・身体的負担となります。最悪の場合、アクアフィリングの存在が原因で、早期発見すべき乳がんの診断が遅れてしまうことになりかねません。

組織の壊死や皮膚の変色

アクアフィリングが組織の微細な血管を圧迫し続けると、血流障害が起こります。5年以上の長期にわたって組織が圧迫され続けると、周囲の脂肪組織や乳腺組織が壊死(組織が死んでしまうこと)を起こすことがあります。壊死が進行すると、胸の皮膚が不自然に凹んだり、どす黒く変色したりといった、見た目の大きな変化となって現れます。こうなると、単に注入物を除去するだけでなく、ダメージを受けた組織の修復も必要となり、元の綺麗な胸に戻すことが極めて難しくなります。放置すればするほど、治療の難易度は上がり、後遺症のリスクも増大します。

乳がん検診を正しく受けるためにも、異物は早期に取り除くのが賢明です。将来の健康を守るという視点で、今の状態を放置しないことが何より大切と言えるでしょう。

安全に除去するための治療法と選択肢

吸引による除去の限界とメリット

初期段階のアクアフィリング除去では、小さな切開口からカニューレを挿入して吸い出す吸引法が選択されることがあります。この方法のメリットは、傷跡が非常に小さく、ダウンタイムが比較的短いことです。しかし、5年が経過して組織に細かく入り込んでいたり、膜を作って固まっていたりする場合、吸引だけで100パーセント除去することはほぼ不可能です。無理に吸い出そうとすると周囲の組織を傷つけるリスクもあり、完全な除去を目指すのであれば、吸引法だけでは不十分なケースが多いのが実情です。あくまで補助的な手段、あるいは広範囲に散らばったものを回収する手段として捉える必要があります。

切開による組織内洗浄の重要性

確実な除去を目指すのであれば、乳輪の縁などに切開を加え、医師が直接目視しながらアクアフィリングを取り除く切開法が推奨されます。特に5年経過した症例では、アクアフィリングがドロドロに変質していたり、周囲の組織と癒着していたりするため、生理食塩水で何度も丁寧に洗浄(デブリードマン)することが不可欠です。感染を起こしている場合は、膿とともに感染源をすべて取り除く必要があります。切開法であれば、形成された被膜や、ダメージを受けた組織も同時に処理できるため、再発や後続のトラブルを防ぐ上で最も確実な選択肢となります。手術は高度な技術を要するため、経験豊富な医師に依頼することが重要です。

除去手術は一度で終わらせることが理想的です。ご自身の状態に合わせて、吸引と切開のどちらが最適か、精密なエコー検査を元に判断してくれる医師を選びましょう。

よくある質問

アクアフィリングを注入して5年経ちますが、症状がなければそのままでもいいですか?

現在、自覚症状がなくても、将来的に感染や移動が起こるリスクを完全に否定することはできません。特にアクアフィリングは、10年以上経過してから突然トラブルを引き起こす事例も報告されています。また、前述の通り乳がん検診の妨げになるという大きなデメリットもあります。すぐに除去しない場合でも、少なくとも年に一度は乳腺外科や美容外科でエコー検査を受け、注入物の状態と周囲の組織に異常がないかを確認し続けることを強くお勧めします。

除去手術をした後にバストが萎んでしまわないか心配です

アクアフィリングを除去すれば、その分のボリュームは当然減少します。しかし、放置して組織の壊死や炎症が進むと、さらにバストの形が崩れてしまう恐れがあります。除去と同時に、あるいは組織が回復した後に、安全なシリコンバッグへの入れ替えや脂肪注入による再建を行うことは可能です。まずは現在の異物を取り除き、土台を健康な状態に戻すことを優先し、その後のボディラインの整え方については医師とじっくり相談するのが良いでしょう。

除去手術にかかる費用やダウンタイムはどのくらいですか?

費用はクリニックや注入量、組織の癒着具合、感染の有無によって大きく異なりますが、一般的には30万円から80万円程度が目安となります。健康保険が適用されるケースは非常に限定的で、多くの場合は自由診療となります。ダウンタイムについては、吸引法であれば数日から1週間程度、切開法であれば1週間から2週間程度の腫れや内出血が生じます。激しい運動は1ヶ月程度控える必要がありますが、デスクワークなどは数日後から再開できることがほとんどです。

MRI検査でアクアフィリングの正確な位置が分かりますか?

はい、MRI検査はアクアフィリングの状態を把握する上で非常に有効な手段です。エコー検査よりも広範囲かつ立体的に、注入物がどこに分布しているか、周囲の組織とどのように接しているかを詳細に描き出すことができます。特に5年経過して移動が疑われる場合や、しこりの原因を詳しく調べたい場合には、MRI撮影を行うことで、より安全で確実な除去計画を立てることが可能になります。手術を検討される際は、事前にMRI検査を受けることを推奨します。

藤林万里子
形成外科専門医:グラムルールクリニック銀座 院長
グラムルールクリニック院長の藤林万里子と申します。私は日本形成外科学会認定専門医および日本美容外科学会(JSAPS)正会員として、美容医療に携わってまいりました。患者様の理想とする美しさを実現し、自信に満ちた毎日を送っていただくためのサポートを全力で行ってまいります。

【主な資格】
日本形成外科学会 認定専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
【経歴】
2016年 スキンリファインクリニック吉祥寺院院長 勤務
2021年 東京美容外科 銀座院院長 勤務
2024年 GLAMRULE CLINIC 銀座院 院長
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